葬送一体型台車「Full Moon」
中西金属工業株式会社/株式会社kaimen
GK京都のデザイン支援
火葬場で使用される葬送一体型台車「Full Moon」のデザインを担当。現地調査や葬送儀式への参与観察を通じて課題を抽出し、事業視点での提案、業務フローの見直し、与件定義から機構設計、外観デザイン、操作系の検討まで、多角的な開発を推進しました。
株式会社kaimen、株式会社コンセントとともに、葬送の現場における空間・人員・管理コスト、ご遺族の心理的な負荷や儀式としての所作を総合的に捉え、棺の搬送から収骨までを一台で担う新たな構造を構築しています。
背景
少子高齢化や単身世帯の増加、宗教観の多様化、経済的合理性の重視、さらにコロナ禍を契機とした行動様式の変化などにより、葬送のあり方は大きく変化しています。
「直葬」「家族葬」「無宗教葬」など、少人数かつ簡素な葬送スタイルが広く受け入れられる一方、2040年に向けて葬送需要が急増し、その後は急激な減少が見込まれるなど、葬送の現場を取り巻く環境も変化。
こうした変化の中で、限られた空間や人員で、これまでと同様に尊厳ある葬送を支えていくことが求められています。
課題・目指したこと
火葬場では、棺を運ぶ「棺台車」と、火葬後の収骨を行う「収骨台車」がそれぞれ用いられています。
通常は係員の丁寧な進行によって、ご遺族がその分断を意識することはありません。しかし現場を調査すると、二つの台車を使い分けるために、機器や導線、保管場所などがそれぞれ必要となり、現場の努力によってスムーズな葬送が支えられていることが明らかになりました。
そこで、これまで別々に存在していた棺台車と収骨台車の機能と運用を一体化。空間・人員・管理コストを合理化しながら、葬送に必要な一連の儀式を尊厳を保ったまま支えることを目指しました。
コンセプト
「人生の最後の時間をいかに穏やかに支えるか」を問い、葬送の現場(事業)における構造・運用・体験を一体として捉えることを基本的な考え方としました。
棺を運ぶところから収骨まで、一連の葬送を一台で担える構造とすることで、従来分かれていた機能と運用を集約。効率性だけを追求するのではなく、葬送という儀式にふさわしい所作や空間との調和を両立させています。
また、文化や宗教の違いに左右されにくい普遍的な形状を採用し、導入先に応じて色・素材・質感を調整できる柔軟性も持たせました。
デザインプロセス
株式会社kaimen、株式会社コンセント、GK京都で構成するチームが約5年間にわたり、複数の葬送現場で観察と検証を重ねました。
事業者へのインタビュー、現地調査や葬送儀式への参与観察を通して、葬送の現場で行われている一連の所作や、そこで働く人々の動き、ご遺族の体験を捉え、顕在化している課題だけでなく、現場の運用によって見えにくくなっている課題も抽出。
その上で、棺台車と収骨台車に分かれていた機能と運用に着目し、与件定義から機構設計に至るまで検討を重ねました。二つの台車を一体化する新しい構造へと発展させています。 さらに、機能や効率性だけでなく、葬送というセンシティブな場面において、製品の形状や動作がどのような印象や意味を与えるのかにも配慮。外観や操作系に至るまで、儀式としてのあり方を踏まえてデザインしています。
具体的な表現
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棺搬送と収骨を一台に集約 これまで二台に分かれていた棺台車と収骨台車を一体化。保管・充電・導線設計などを集約することで、省スペース化と運用の柔軟性を実現しました。
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葬送空間に調和する造形 外装は可能な限り機械的な印象を抑え、葬送儀式の空間に調和する、穏やかな存在感と信頼感を持った水平基調のデザインに。さらに、文化や宗教に左右されにくい形状を基本としながら、導入先に応じて色・素材・質感を調整できる仕様としました。

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所作を支える操作系 棺搬送と収骨搬送の双方を、迷うことなく確実かつ丁寧に操作できるよう、操作系を設計。LEDインジケータによる操作支援も実装しています。また、火葬炉前室での格納を考慮し、ハンドルを跳ね上げられる構造を採用しました。

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一台で儀式全体を支える祭壇アタッチメント 別体の祭壇アタッチメントを装着することで、台車自体を祭壇として使用できる構造に。 儀式に必要な補助道具も内部に格納できるため、火葬前から収骨までの一連の工程を一台で担うことができます。
社会にもたらした価値
現在、中国地方、中部地方の斎場へ導入準備を進めています。その他の自治体からも導入検討の打診があり、今後全国の斎場へ拡大する予定です。
Credit
- クライアント
- 中西金属工業株式会社 株式会社kaimen
- プロジェクト実施期間
- 2020年〜現在
- 領域
- 事業デザイン インダストリアルデザイン UXデザイン
- 担当
- 山本 尚志 石田 祐基
- 受賞
- グッドデザイン賞 2025(BEST100)
